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群れとともに旅立ったアフリカゾウのシャニとわんぱくな息子のジョモ。彼らはオカバンゴ・デルタを出発、広大なカラハリ砂漠を抜け、数百キロの道のりを歩いてザンベジ川を目指す。 群れを率いるのは尊敬されるリーダーのガイア。容赦なく照りつける日差しの中、限られた餌と水を渡り歩き、ときには捕食者の追跡をかわしながら進む。彼らは先祖代々受け継がれた知恵を頼りに、楽園を夢みて歩き続ける。
ディズニーネイチャー/ゾウの足跡を追って
群れとともに旅立ったアフリカゾウのシャニとわんぱくな息子のジョモ。彼らはオカバンゴ・デルタを出発、広大なカラハリ砂漠を通り抜け、数百キロの道のりを歩いてザンベジ川を目指す。彼らの先祖も何代にも渡り、この大移動を繰り返して来たのだ。
シャニたちはカラハリゾウ。彼らのように大陸をダイナミックに大移動するゾウは他にいないと言われている。
シャニには子どもがいる。大きな目をした1歳になるオスのジョモだ。ジョモが大移動に参加するのは生まれて初めて。40歳のシャニは、姉で群れのリーダーであるガイアのあとを継ぐ立場にある。
ガイアと群れの周りにはカバ、リーチュエ、ヒヒなど数多くの野生動物が生息している。動物たちが集まるのは豊かな水があるため。はるか遠い高地からあふれ出た水が少しずつ流れ込み砂漠の真ん中に緑豊かなオアシス、オカバンゴ・デルタを形成している。
雨季の終わりが近づき、まもなく野生動物の大移動が始まる。地球の生き物にとって何よりも大事な水。その命の水を乾季のカラハリ砂漠で見つけるのはかなり難しい。ここは地球上で最も乾燥した土地のひとつなのだ。
水の楽園は次第に干からびていき砂ぼこりが舞う荒れ地に姿を変え、点々と残る水場もいずれ蒸発してしまう。
ガイアは長年の勘から、出発のときが近いと感じている。水場が消えてしまう前に灼熱のカラハリ砂漠に足を踏み出さなければならない。
仲間が頼ることになるガイアの経験と知恵は、何世代にも渡って先祖から受け継がれてきた彼らの財産だ。“ゾウは決して忘れない”という表現があるように、この地上最大の哺乳動物は記憶力がよく、過去との繋がりをとても大切にすると言われている。
ガイアは先祖が歩いてできたゾウの道へと群れを導く。道は円と円を放射状に繋いでおり、砂漠を渡りきるためには正しい道を選び、円のところにある水場を渡り歩かなければならない。
道中、栄養価の高いモパネの葉を食べたり、幹に雨水を蓄えたバオバブの木から水分補給をしながら歩き続ける群れ。
ゴール目前では激流のザンベジ川を渡ることを余儀なくされる。向こう岸にある島こそ彼らが目指していた安息の地なのだ。ゾウは浅瀬を渡り始めるが、そこには腹を空かせたワニが身を潜め、ジョモのような子ゾウに狙いを定めている。敵はワニだけではない。激流の川下には世界最大級の滝、ビクトリアの滝が待ち構えている。
群れは最後の力を振り絞り、川を渡りきることに成功。しばらくの間はこの島に留まり、水を好きなだけ飲み、ヤシの木を揺らせば落ちてくる実を食べて過ごすことができる。
数か月経って食べ物が不足し始める頃には、少しずつオカバンゴ・デルタに水が戻り始める。群れは再び、アフリカの大地を歩いて戻らなければならない。
ガイアが選んだのは決して楽ではない道。アンゴラ高地の洪水が例年より早まったため、最短ルートでデルタを目指したいからだ。
ゾウは人間と同じように感情的な繋がりを大切にする動物である。ここまで無事来られたのも、仲間同士の強い絆があったからこそ。
リーダーのガイアを先頭に、シャニ、ジョモたちの群れが最短ルートを歩み始める。だがそこはライオンの生息地でもあった…。